誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

(1)誤嚥性肺炎とは?

食べ物や唾液などが気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といい、誤嚥が原因で起こる肺炎を誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)といいます。

誤嚥性肺炎は、飲み込みがうまくできなくなることが関係しています。
食べ物と一緒に口の中の細菌を誤嚥することによって肺炎が起きやすくなるのです。
しかし、誤嚥そのもので肺炎になるわけではありません。口の中が清潔に保たれていれば誤嚥しても肺炎になりにくくなります。

ですから、誤嚥性肺炎を予防するには、口の中を常に清潔に保つことが大切なのです。

(2)誤嚥性肺炎のサイン

誤嚥性肺炎には、次のような典型的な症状があります。
○発熱
○激しい咳と痰が出る
○呼吸が苦しい
○肺雑音がある
これらは風邪と間違えて診断されてしまうことがあり、特に高齢者でこのような症状がある場合は誤嚥性肺炎の可能性を考える必要があります。
また高齢者の場合典型的な症状がでないことがあり、次のような症状が見られる場合でも、肺炎の可能性があります。
○元気がない
○食事時間が長くなる
○食後に疲れてぐったりしている
○ぼーっとしていることが多い
○口の中に食べ物をため込んでなかなか飲みこまない
○体重が徐々に減ってきた
○夜間に咳き込む
日常生活の変化に注意し、これらの症状がみられたら、かかりつけの医師や病院に相談することが、誤嚥性肺炎の発見につながります。

(3)誤嚥性肺炎予防のポイント

①口の中を清潔に保つ

口腔ケアにより口の中の細菌を減らすことは重要です。特にブラッシングは口腔内をきれいにするだけでなく、ブラシが口腔内を刺激して唾液の分泌を促し、口の中が潤います。

②食事の工夫

食事形態は重要です。一般的にはペースト状やゼリー状、ムース状が飲み込みやすい形態となります。これらの形態は歯の状態が悪くて十分に噛めなくてもそのまま飲みこむことができます。また、口の中で食べ物がバラバラにならず、一つの塊となることでまとまって飲みこむことができ誤嚥しにくくなります。その人がむせにくい形態に調整することが大切です。

③お口の体操

1. 呼吸のトレーニング(腹式呼吸)
息を吐くときにお腹を引っ込め、吸い込むときにお腹を膨らませるのが腹式呼吸です。両手でお腹に手を当ててふくらんだりへこんだりするのを確認しながら行いましょう。息を吸う吐くを5~10回、1日に数回繰り返しましょう。

2. 発声のトレーニング
とにかく声をだしてください。新聞や本の音読、歌、おしゃべりなど何でもいいので、毎日大きな声をだしてください。

3. 口のトレーニング
・舌を出したり引っ込めたりします
・舌を左右に動かします
・舌で唇のまわりをぐるっとなめます
・唇を突き出したり横に引いたりしましょう

4. 首のトレーニング
首をゆっくりと回したり、前後左右に曲げましょう。

これからの季節、空気が乾燥し肺炎にかかりやすい時期です。口腔ケアをしっかり行い、誤嚥性肺炎を予防しましょう。

言語聴覚士 池田知弘