私は20年間、介護老人保健施設(老健)で働いてきました。
老健では、「利用者さんが入所した時よりも退所する時の方が少しでも元気になっていてほしい。ご家族もその間介護から解放されて休めて良かった。」と感じていただくことを大切にしていました。自宅へ帰ることを目標に、リハビリを重ね、住み慣れた家に帰り、家族にと一緒にあるいは見守られながら暮らすこと。その姿を見るたびに、この仕事のやりがいを感じていました。
そして介護医療院へ異動して3年。
ここでは、重い病気と向き合っている方や、食事が十分に摂れず点滴が必要な方、寝たきりで過ごされている方も多くいらっしゃいます。そのため、「自宅へ帰ること」を目標にするというより、「苦痛なく、その人らしく穏やかな毎日を過ごしていただくこと」が大切な支援になります。
老健では、リハビリを続けた先に利用者さんの一番良い状態が訪れることが多くありました。一方で介護医療院では、「今日のこの時間が、一番良い状態かもしれない」と感じることがあります。
だからこそ、「いま」という時間の大切さを強く意識するようになりました。
「また今度会いに来よう。」
「暖かくなったら外に出よう。」
「もう少し元気になったら、ゆっくり話そう。」
そんな「また今度」が叶わないこともあります。
外出できるのも、「今日」が最後かもしれない。
家族とゆっくり話せるのも、「今日」が最後かもしれない。
手を握って笑い合える時間も当たり前ではありません。
時間は誰にも巻き戻すこともできません。
介護医療院で働くようになって、「たくさん一緒に過ごせたので悔いはありません。良かったです。」と話されるご家族の穏やかな表情にも何度も出会ってきました。一緒に過ごした時間は尊いものだと感じました。
この3年間、利用者さんやご家族との出会いを通して、「会えることは決して当たり前ではない」ことを教えていただきました。
私自身、両親は県外に住んでいるため、思い立ってすぐに会いに行ける距離ではありません。だからこそ、「いつか時間ができたら」ではなく、「時間をつくって会いに行こう」と思うようになりました。
家族はいつも近くにいるからこそ、その存在の大きさに気づきにくいものです。しかし、一緒に過ごせる時間には限りがあります。
「また今度」ではなく、「いま」を大切にしたい。
介護医療院で働く中で、私が利用者さんとご家族から教えていただいた、一番大切なことです。
介護医療院だんえん
介護支援専門員 尾上利
