多職種連携の難しさ

「雪道を歩く高齢者」「雨の中自転車に乗っている高齢者」の映像を医療従事者に見せたとします。「危ない」「たくましい」「寒くないのだろうか」「家族は把握しているのだろうか」ということを思いつく人もいるでしょう。回答は十人十色だと思います。

「危ない」と「たくましい」という回答は対極な回答ではありますが、いずれも正解だと思います。一方で、どのような回答も単独では不完全なものであるといえるのではないでしょうか。

利用者様の支援を行う上で、このような不完全な回答をできる限りたくさん集め、そのなかから具体的なプランを導き出していくという姿勢が大切であると思います。ところがこれがなかなか難しく、スタッフの1つのアイディアで進めがちです。

ある問題点に対して1つの答えを見つけると、それも正解ですが、見つけたところ以外にも正解があるはずです。人の生活機能を支援するという場面では、正解に幅があると思います。

一方で1つの正解をみつけると、それ以外のものはあたかも間違いであるかのような錯覚にとらわれてしまうことも少なくありません。「連携」を本物にする為には、まず何よりも自分自身が他者の意見を聞く姿勢を持つことが重要です。多職種で互いに正解を認め合う姿勢というのはとても大切なものだと思います。「多職種連携」という言葉はすでに使い古された感がありますが、それを実現させることはなかなか難しいことだと思います。

例えば動作能力をリハビリのスタッフが評価して福祉用具を選定するといったことはよくあることですが、その選定においても正解に幅があるはずです。1人の意見で杖を選定してしまうことは不完全だと思います。またエビデンスに捉われ過ぎて、利用者様のことをそっちのけで、それを正解と決めつけて進めてしまうのも良くないことだと思います。利用者様、ご家族、ケアマネージャー、福祉用具事業所の方などの意見を出すことで、最終的に補助具は必要ないという結論に至るかもしれません。

どれが正解なのか実行してみないとわからないことも多いと思いますが、色々な意見を出しあうことで、臨機応変に対応出来るように備えることが、利用者様を支援するうえで大切であると考えます。

利用者様の生活機能は身体機能のみで決まる訳ではなく、関わる人々の柔軟なアイディアや観察力など、どれだけ利用者様に関心をもって関わることが出来るかが重要であると思います。

理学療法士
小林知量