私たちの健康は、毎日の食事や生活習慣と密接に関わっていますが、その中でも歯の健康は意外に見落とされがちです。歯はただ食べ物を噛むためだけではなく、全身の健康に大きな影響を与えています。特に、口内の健康と栄養は深い関連があり、食生活が歯や歯茎の健康に与える影響は計り知れません。今回は、歯と健康、栄養の関係についてと日々の食事でできる予防方法についてご紹介したいと思います。
始めに歯と健康における栄養の役割についてです。食事は様々な食品を組み合わせてバランス良く摂るのが良いですが、特に歯に必要な栄養素としてはカルシウムやマグネシウム等のミネラルのほかに、たんぱく質やビタミンA、D、Cなどがあります。
それぞれの栄養素の役割と豊富に含まれている食品
▼たんぱく質
皮膚や筋肉、内臓や骨などを構成する主要な成分。身体の組織と同様に歯の周りの歯肉等の歯周組織や歯の基盤にも必要になる栄養素。
○肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品
▼カルシウム
骨や歯を構成する主要な成分で歯を強くするために欠かせない栄養素。歯のエナメル質を強化し、虫歯の原因となる酸から歯を守る役割がある。
○小魚、乳製品、卵、海藻類(ひじきやわかめ等)
▼ビタミンA
口腔内の粘膜を保護する、歯のエナメル質の形成を助ける、歯肉の健康を保つなどの役割がある。
○レバー、卵、うなぎ、緑黄色野菜(にんじん・小松菜・かぼちゃ等)
▼ビタミンD
カルシウムの吸収を促し、歯のエナメル質を強化する作用、歯や歯を支える骨を強化する働きがある。
○きのこ類(干ししいたけ・キクラゲ)、卵、魚介類(鮭・いわし・さば)
▼ビタミンC
コラーゲンの生成を助け、歯周組織の強化、歯茎の炎症や出血の予防、加えて免疫力を高め、口腔内の感染を抑える等の効果がある。
○ブロッコリー、ピーマン、苺、キウイフルーツなど
▼マグネシウム
カルシウムの吸収と利用を助ける、歯茎を形成する役割がある。
○納豆、玄米、海藻類
以上の栄養素が不足すると歯が弱くなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。それらを防ぐために、日々の食事で実践できる歯の健康を維持する方法についてご紹介します。
①よく噛んで食べる。
まず一口目を意識して噛んで食べることで噛む力を維持できる、十分な栄養が摂れ唾液の分泌量が増える、歯が汚れにくくなることにつながります。よく噛むために具材を大きく切る、歯ごたえを残す、床に両足の底をつけて急がずゆっくり食べるなど食事環境を整えることが大切です。
②間食の回数や食べ方に注意する。
唾液は食後の酸性に傾いた歯垢を中性方向に戻し、溶けた歯を修復する働きがあります。間食が加わると酸の産生に唾液の働きが追いつかなくなり歯垢はさらに酸性に傾きます。そのため間食の回数は1日1回~2回が望ましいとされています。特に砂糖を多く含むものや歯について残りやすい食べ物等は歯垢が残りやすいため、間食後はすぐに歯をみがくか歯をすすぐなどして、食べ物を口に残さないようにするのが良いです。
③バランスの良い食事
1日3食規則正しく、主食(炭水化物)、主菜(たんぱく質)、副菜(ビタミン・ミネラル)をバランス良く組み合わせて食事を取ることが大切です。
④食事後の口腔ケア
歯の健康維持のため最低でも1日2回、3分間以上の歯磨きを行うことが推奨されています。また時間がある際には歯間ブラシやフロスなどを使うことで、より口腔内をきれいに保つことができます。
歯の健康は、見た目の美しさだけでなく、全身の健康にも大きな影響を与えます。特に栄養バランスの取れた食事を意識し、日々のケアを習慣化することで、歯の健康を維持することができます。今すぐにでも、口腔ケアと栄養管理を見直し、健康な歯を守りましょう。
今市Lケアセンター 管理栄養士 瀬古晴菜