まずはある日の話から…。
トイレに行った息子が「ママ、トイレットペーパーがペーパーになっちゃったんだよ。ほら。」と言ってきました。どういうこと?と思い、見に行くとトイレットペーパーの芯を持っている我が子がいました。
「芯」という言葉を知らなくても、彼の中で知っている知識をフル活用したのでしょう。~トイレットペーパーが無くなってしまった、つまり『これ(芯)』はトイレットが無くなった『ペーパー』か!~とでも思ったのでしょうか。知らないことを恥ずかしがることなく、【伝えたい】という気持ち故の子供らしいエピソードだと感じました。
この【伝えたい】がきっかけで「コミュニケーション」は始まります。コミュニケーションとは、話し手と聞き手の情報共有を目的に行われるものであり、老若男女問わずあらゆる形で表現されます。コミュニケーションは「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」に大別されます。
言語的コミュニケーションは人間の主要なコミュニケーション手段の一つです。話す・聞く・読む・書く等で言葉や文章によって意思疎通を行います。これに対し、非言語コミュニケーションは身振りや手振り、表情や視線、声の抑揚や大きさ、タッチ、時間の使い方等でやりとりをします。言語的コミュニケーションと同様に、人間のコミュニケーションの重要な部分であり、言葉以上に情報を伝えたり、意思疎通を円滑にするために用いられています。これらは、相互補完的な関係に有り、お互い補完しあって意思疎通を深めることができます。
例えば「おはよう」と言葉に出して伝える…これは言語的コミュニケーションです。ではこの「おはよう」に➀おじぎを加える、ハキハキ言う、相手の目を見て言う、➁ボソボソ言う、背を向けて言う、早口早足で言う手段の非言語的コミュニケーションを加えたらいかがでしょうか。同じ言葉でも➀・➁全く異なる印象を持ちませんか?こうした非言語的コミュニケーションを私たちは無意識に、時には意識的に使い分けているのです。
コロナ禍でマスクをつけることが習慣となっていましたが、今では個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本とされています。とはいってもやはりみんなが脱マスクは未だに難しい日々が続いております。マスクをしてのコミュニケーションは表情が読み取りにくく、口型もわかりにくく、そして聞こえにくいため、やりとりが弊害されているように思うこともあります。聞き誤りや聞き返しが増えるとついイライラしてしまい、口調もきつくなると表情が険しくなることもあるでしょう。年を重ねると更に見えづらさや聞き取りづらさが増長し、伝えることすらめんどうになるかもしれません。
そんな時こそひと呼吸おいて、【伝えたい】から始まるコミュニケーションを改めて受け止めようと心がけています。そのためには、よりいっそう表情豊かに話してみる、ゆとりを持って応対する、うなずく(はい)・首振り(いいえ)をはっきりみせる、伝え合うことができたら一緒に喜ぶ等など、まっすぐな非言語的コミュニケーションを用いると共に、言語的コミュニケーションを添えて、豊かなことばのキャッチボールをしていきたいです。恥ずかしがらずに自分の持っている知識をフル活用して、多くの方とあらゆるコミュニケーションを図っていきたいと思いました。
言語聴覚士 髙久聡美