関わりの第一歩

地域包括支援センター(以下「包括」と略します)の業務の一つに「認知症や精神疾患の問題に関する相談」があります。

『ここ一年間父親の言動がおかしい。どうしたらよいか相談したい』

『コンビニのATMでお金が降ろせないと店員に聞いてくる。カードが違うと説明しても理解できない様子』

『昨日も今日も銀行に来て、通帳がないから再発行してほしい。印鑑や印鑑証明が必要と話をするが理解できない様子』

『最近物忘れがひどくなっている。西包括で関わりありますか』と駐在所より連絡が入る。

『一人暮らし。大声をだしている。同じ言葉を繰り返している』

地域の中でこんな状況があると、近所や民生委員、銀行や警察など関係各所から包括に相談がきます。通報や相談を受けたら早急に対応し状況を把握します。事前に、市の高齢者台帳から支援の有無、家族状況などを確認したり、一人暮らしや高齢者世帯は民生委員から情報収集をします。全く情報のない場合もあります。

はじめて訪問する時は、拒否されないように慎重に訪問します。拒否されるとその後の介入ができなくなるからです。

関わりの第一歩は、本人や家族に会えることです。

初回訪問は、不信感を与えないように訪問の目的を伝えます。名刺や包括のチラシを見せながら「役所からの依頼で、高齢者のお宅を回っています。困っていることはないですか。おからだの調子はどうですか。」などと声をかけ、話の糸口を探ります。困りごとがあれば、利用できるサービスに繋げます。

初回は、生活状況、身体状況(身なり、異臭、家の中の状況)など五感を使って把握します。緊急性の有無を確認し「また、訪問してもいいですか。」と同意を得て2回目の訪問に繋げます。物忘れや被害妄想があっても生活できている方は、定期的(月1回)に訪問し生活状況や緊急連絡先など把握していきます。定期的に訪問することで安心され、訪問を楽しみにしてくれます。現在、約20件の定期訪問をしています。

日光市の高齢化率は令和4年4月1日現在、36.3%で3人に1人は高齢者です。厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、認知症の有病者数は700万人前後にまで増加すると推計しており、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になる可能性があると推測しています。包括として、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活が続けられるように、これからも支援していきたいと思います。

※高齢化率とは、総人口のうち65歳以上の方の占める割合のことです。

今市西包括支援センター 看護師 小林明子