選択性

季節は冬へと向かい、日本百名山でもある男体山も初冠雪を見せる時期となりました。

私は毎年、雪が積もった山へ行くことを楽しみに生活しています。この時期は徐々に高揚感が高まっているのを自身でも感じています。皆様もぜひ楽しみを大切にしてみてください。

私は前職で訪問看護ステーションにおける訪問リハビリを仕事として働いていました。そこで対象となる利用者様は、大半が病院から退院して在宅復帰をされてきた方々でした。しかしながら、ベッド上生活となっている方、日常生活を自立出来ている方、日常生活動作は自立しているが精神疾患によって生活に支障が出ている方など、身体機能や能力は多様となっている状況でした。ではなぜ、状態が万全でなくても、在宅復帰される方とそうでない方がいるのか。そこに、様々な『選択』が存在しています。

第一に本人、家族が在宅復帰を選択するか。私が担当した利用者様の中に、廃用症候群により筋力低下や関節拘縮等生じており、加えて心疾患により医療的管理の必要がある方がいました。医療従事者としては自立度が低いため在宅復帰を推奨できない状況でしたが、本人が強く希望されたため、退院されてきました。その選択は正しいのか、間違いであったか。それは立場や状況によって感じ方が異なるはずです。

話は一転しますが、私は最近将棋に熱中しています。将棋は数手先の展開を考え一手の選択をする、とても選択性が重要となる遊戯となっています。ゆえにプロの試合では、長時間に渡り思考を繰り返し、決断の一手を指す場面が多く見られます。私も気づけば1時間以上経っていることがよくあります。

私は生活と将棋が『選択性が重要』という点で重なる部分があるように感じています。「今」の選択が「今後」を大きく左右していく。一つの選択がその後の人生を大きく変えることもあり得るのです。だからこそ、選択することの重さを皆さんにも感じて頂きたいと考えています。

また私たち療法士は、その『選択』を尊重し、如何に肯定的な結果へと結び付けていけるか。機能訓練や環境調整、作業活動を通してその方の選択を全力で後押ししていきたいと考えています。選択肢が増えれば可能性も広がります。可能性を信じて、普段自分では想像もしない選択肢を視野に入れてみるのも、未来を明るくする一手に繋がるかもしれません。

作業療法士 阿久津翔大