寄り添うために

ムスカリの花を見つけて「アッ ブドーダ!」と今年も息子が言いました。
去年も息子が同じ場所で同じ言葉を言ったことを思い出しました。
「これはムスカリという花だよ。」と伝えた際に
「チガウヨ ダッテ コエ ブドーダヨ!」と言われたので、
今年はしゃがんで息子の目線になってみると…
ムスカリはとても大きく見えて花の1つ1つがまさに葡萄の実のようでした。
他の花の香りもして、より春を強く感じた気がしました。季節の感じ方は人それぞれです。
認知症の初期症状の1つに時間の失見当識があげられます。
時間に関する情報更新を時間軸で早い順に並べると
「秒、分、時、午前・午後、日、週、月、季節、年、時代」となります。
時間の更新頻度が早い「秒・分・時」などは十分に意識を向けておかないと
情報更新に遅れが生じて、勘違いや間違いにより、時間の感覚にずれが起こってしまします。
これに対して「月、季節、年、時代」は時間の情報更新の頻度が遅いため、
一般的には勘違いや間違いなどによる感覚のずれは起こりにくくなります。
しかし「時間の失見当識」がある場合、
時間の情報頻度が遅い「月、季節、年、時代」の認識もうまく処理できなくなってしまいます。

時間がわからないという不便さはあっても、ヒントを出すことで自ら思い出すことが出来れば、
リハビリテーションが有効になります。
その一つに「インテリア リアリティ・オリエンテーション」という手法があります。
インテリアを用い、季節を感じることができる環境づくりを整備することで、
視覚的に季節を感じることができ、見当識を高めることができます。
自然に視覚的に入ってきた季節に関する情報が、
日常会話の促進や洋服の正しい選択のためのヒントとなります。
例えば今月は5月のカレンダーと菖蒲の花、こいのぼり等を飾るといったものです。
モノクロよりカラー、模造品より実物がより視覚的情報があきらかになるので季節感が増すでしょう。
それらを背景にご本人を入れて写真を撮る、
その方がその時に話した季節にまつわるキーワードを記すことで
より時間に対する意識づけを印象深くすることができるかもしれません。
季節の訪れの感じ方は人それぞれ、五感を使って感じます。
本来であれば例年この時期は天気のよい日に
利用者さんと屋外に出て花を愛で、暖かい風を感じていただいています。
今はせめて屋内で季節を感じていただけたらと、
お花見弁当や該当月の掲示物などLケアセンターでもスタッフがあの手この手工夫をこらしています。
利用者さんもまた窓から見える景色をじーっと見つめて季節をみつけていらっしゃいます。
車椅子の方からみえる景色を歩いてる方が姿勢を合わせてみている姿もあります。
そんな暖かい利用者さんの1コマ1コマを拝見し、
ご本人の残存能力を見極めながら思いに寄り添ってさりげない支援を続けて参りたいと感じました。

言語聴覚士 髙久聡美