失った筋肉を取り戻すには

ここ数年、夏は猛暑の印象が強かったのですが、梅雨入り以降、26年ぶりの冷夏となっております。梅雨明けからの猛暑に体調面で心配されている方々も多いのではないでしょうか。

特に高齢者の方々は、気温の変動に伴い、生活面での活動量も低下を招きかねません。運動不足がたった2週間続くだけで、筋肉の量は大きく低下し、もとに戻すには3倍もの時間を要するとの実験報告があります。(平均年齢23歳の若者17名と平均年齢68歳の高齢者15名が足を2週間動かせないように固定、筋力は若者で28%、高齢者で23%低下したことが明らかとなった)

たった2週間で若者は筋力の3分の1、高齢者は4分の1を失うことになります。もとの筋肉が多いほど失う影響は大きくなります。若い男性では高齢者の男性に比べて、筋肉の量は片足につき平均900g多いそうです。しかし運動不足の期間が長いと、この差は縮まるといわれております。つまり20歳代の若者でも運動をしないと、体力は40~50歳代並みに低下するともいえます。

運動が筋肉に及ぼす影響は、若者のほうが大きいといえますが、運動不足は高齢者にとっても深刻です。上記実験の対象であった高齢者は、その後週に3~4回の自転車トレーニングを6週間続けても、失った筋力を取り戻すことは難しかったようです。このことからも失った体力を取り戻すには3倍以上の時間を必要とします。

特に高齢者の方々は、ベッドで臥床している期間が長引いて、気づいた時には「起きられない」「歩くことが出来ない」といった状況が少なくありません。ベッドで丸1日臥床していると1日1~1.5%の割合で筋力が低下すると言われています。更に怪我などで膝や足首をギプス固定すると1日で1.3~5.5%の割合で筋力が低下するそうです。筋力だけではなく、心肺機能や関節の動きも悪くなり、悪循環から益々寝たきりになってしまう可能性があります。

このようなことからも、日頃から日常生活で運動不足に陥らない習慣を持つことが大切だと考えます。高齢者の方々は「年のせい」「病気のせい」とあきらめないで、毎日立ったり座ったり、歩いたり出来る限り行っていきましょう。リハビリテーションでは、ご利用者様やご家族に、ご自宅でも体力が低下しないように、セルフトレーニングのアドバイスを行なったり、生活に運動を取り入れることの大切さについても説明させていただいております。

理学療法士 小林 知量